化粧品広告のワナ。「天然成分は安全」、「合成成分は危ない」という思い込みは危険かも!?

この記事を書いた人
小鳥遊 文子
コスメコンシェルジュ

【保有資格】 ・2022年~:日本化粧品検定1級 ・2023年~:特級コスメコンシェルジュ/化粧品成分上級スペシャリスト(化粧品成分検定1級) 化粧品を信仰しない、フラットな目線からの記事作成を心掛けています。

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「肌にやさしい天然成分を配合」、「合成○○は不使用です」、「植物由来成分100%」。化粧品の広告や商品説明で、こんな表現を見たことはありませんか?

こうした広告を何度も目にしていると、「天然成分は安全で、合成成分は危険」というイメージが刷り込まれていきますよね。

ですが、その認識は本当に正しいのでしょうか?

ここでは「本当に天然成分は安全で、合成成分は危険なのか?」という疑問に対して、特定のメーカー・商品に肩入れしない立場から回答します。

そもそも「天然成分」「合成成分」とは?

自然の成分をそのまま使うのが「天然成分」

「天然成分」とは、化学的な処理を加えずに、自然物から抽出したままの成分を指します。 例えば、ホホバ種子油やオリーブ果実油などの植物油脂や、植物エキスといった成分が天然成分です。

植物由来のものの他に動物微生物由来の成分や、鉱物由来成分もあります。

化学的に合成されているのが「合成成分」

化学的な処理を加えていないのが「天然成分」なのに対して、化学的に合成されたものを「合成成分」と呼びます

例えば、ほとんどの人が一度は使ったことがあるであろう「石鹸」も、代表的な合成成分の一つです。もう少し詳しくいうと、油脂にアルカリを反応させて作る「合成界面活性剤」なのです。

なお、合成成分は大きく2つのタイプに分けられます。

  • 天然成分から不純物を取り除いたり、安定性を高めるなどすることで、化粧品成分により適した形に加工されたもの。
  • 自然界にはない、まったく新しい成分を化学的に合成して作ったもの。(希少価値の高いものなど、天然成分を真似して作る場合も。)

「天然由来成分」は「合成成分」

「天然成分」と混同されやすいものとして、「天然由来成分」もあります。しかし、「天然成分」と「天然由来成分」は違うものです。

「天然成分」は自然のものから抽出した成分そのままなのに対して、「天然由来成分」は「天然成分に化学的な処理を加えた成分」を指します。

つまり、「天然由来成分」は「合成成分」の一種なのです。

メーカーによって「自然由来成分」と表現することもありますが、それも「天然由来成分」と同義と考えてよいでしょう。

また、原料が植物の場合は、「植物由来成分」と呼ばれることもあります。これも植物から抽出した成分に化学的処理を施したものなので、合成成分の一種です。

「天然成分は安全」、「合成成分は危険」とは限らない

天然成分にも危険なものもある

画像は猛毒を含むことで有名なトリカブトです。トリカブトの毒も「天然成分」ですよね。

合成成分を悪者扱いする化粧品広告の影響もあって、消費者の間には「天然成分は安全」というイメージが浸透しています。ですが、「天然成分だから安全」という思い込みは危険です。

例えば、リンゴやナッツ類から抽出されるエキスや油脂は、化学的な処理をせずに使えば「天然成分」ですが、人によってはアレルギーの原因になります。

また、2004年にはセイヨウアカネの根から採れる「アカネ色素」に遺伝毒性・肝臓への発がん性があることが分かったため、化粧品への使用が実質禁止になった事例もあります。

江戸時代~昭和初期には「鉛白粉」による鉛中毒が社会問題になりましたが、「鉛」も「天然成分」です。

合成成分の方が安全な場合も多い

「合成成分は危険」というイメージについても、逆に天然成分よりも安全な傾向があります。

化学合成によって成分のよい部分だけを残して、不純物などの肌に悪いものは除去できるため、「天然成分のまま」よりも「合成成分に加工」した方が安全性を高めやすいからです。

例えば、「合成香料」は嫌われがちな合成成分の一つですが、実は天然の芳香成分である「精油」よりも、肌への安全性が高い場合も多いです。「合成香料」は精製によって不純物などの肌に悪いものが取り除かれている分、含まれている成分がよりシンプルだからです。

不純物が含まれていないことで、肌に合わなかったときに原因物質を特定しやすいメリットもあります。

植物由来の合成成分も多い

「植物由来の成分です」と言われると肌にやさしい気がして、「合成成分です」と言われると肌に悪い気がすることはありませんか?

ですが、化粧品によく使われる成分には、「植物由来の合成成分」というものもあり、特別悪いものではありません。

具体的な成分名としては、保湿・抗菌成分である「プロパンジオール」「BG」、防腐補助成分の「ペンチレングリコール」などが挙げられます。(他にもたくさんあります。)

その多くは安全性の高い成分ですが、肌質・体質には個人差があるため、稀に肌に合わない人もいます。

一部には「トウガラシ果実エキス」などの皮膚刺激が強い成分もありますが、その場合は過度な刺激を防ぐため、配合上限が定められています。

「天然」「合成」にこだわらず、肌に合った化粧品を選ぶ

苦手な成分が含まれていないことを確認する

化粧品を選ぶときは「天然か合成か」にこだわるのではなく、自分の肌に合った成分のものを選ぶことが大切です。

特に敏感肌やアレルギー体質の人の場合は、「自然派化粧品」「オーガニックコスメ」といった謳い文句に踊らされるのは危険です。成分表示をよく読み、苦手な成分が含まれていないことをしっかり確認してから使うようにしましょう。

海外メーカーの化粧品は正規販売店で購入する

国内の化粧品メーカーで使用される化粧品原料は、安全性や品質が厳しくチェックされているため、粗悪な成分が使われることはほぼないでしょう。

しかし、海外メーカーの化粧品の場合は、必ずしも日本で流通できる基準を満たしていない場合もあります。

特にネットオークションなど、正規ルートでないところで流通している海外化粧品は注意が必要です。日本では認められていない毒性の高い成分が含まれている商品や、品質の低い模倣品が売られていることがあるからです。

海外メーカーの化粧品を買うときは必ず、正規販売店で購入するようにしましょう。正規販売店であれば、日本で配合できない成分は排除されているので安心です。

まとめ

化粧品の広告では合成成分が悪者扱いされていることも多いですが、「天然成分だから安全で、合成成分だから危険」と考えるのは早計です。

「天然成分」にも危険なものや、人によってアレルゲンになるものもあります

逆に「合成成分」は不純物などの肌に悪いものが除去されている分、「天然成分そのまま」よりも肌への負担が少ない側面があります。

化粧品を選ぶときは「天然か合成か」にこだわるのではなく、肌に合うものを選ぶことが大切です。特に敏感肌やアレルギー体質の人は、成分表示をよく確認し、苦手な成分が含まれていないことを確かめてから使いましょう。