化粧品の防腐剤は危険なの?「パラベンフリー」を選べば敏感肌にも安全?

この記事を書いた人
小鳥遊 文子
コスメコンシェルジュ

【保有資格】 ・2022年~:日本化粧品検定1級 ・2023年~:特級コスメコンシェルジュ/化粧品成分上級スペシャリスト(化粧品成分検定1級) 化粧品を信仰しない、フラットな目線からの記事作成を心掛けています。

記事内に広告を含みます

「肌に悪い」といわれることの多い、化粧品の防腐剤。ですが、お店で売っている化粧品のほとんどは防腐剤が入っているので、不安になってしまいますよね。

そもそも、化粧品の防腐剤は本当に危険なのでしょうか?パラベンなどの防腐剤を確実に避けるには、化粧品をどのように見分ければよいのでしょうか?

ここでは、化粧品に含まれる防腐剤の肌への影響と、防腐剤を避けたい人が化粧品選びで注意すべきポイントを解説します。

化粧品の防腐剤が心配な人は、参考にしてください♪



なぜ化粧品に防腐剤を入れるの?

防腐剤なしの化粧品は腐りやすい

夏場に、飲みかけのミネラルウォーターや麦茶を腐らせてしまったことはないでしょうか?水はとても腐りやすいものの一つです。

そして、化粧水など多くの化粧品には「基剤」として多量の水が配合されているため、そのままだと腐りやすいのです。「植物エキス」が配合されている化粧品も、菌のエサになるので腐りやすいです。

化粧品を開封後に手の脂や汗、雑菌、ホコリなどの「菌・菌のエサ」が混入すれば、ますます腐りやすくなります。

腐って変質した化粧品は、繁殖した雑菌が皮膚刺激や肌荒れなどのトラブルを引き起こすので使えません。見た目には分からなくても、肌に塗ると刺激を感じたり、かぶれたりなどの問題が起こります。

自宅保管しても変質しない品質が求められる

化粧品が私たち消費者の手に渡ったあとは、「一般の人による自宅保管」になります。そのため、「高温多湿を避ける」程度の素人管理でも、ある程度の期間は変質しない品質が求められます。

特にシャンプーやボディーソープといった「浴室で保管される前提の製品」の場合は、湿度の高いお風呂場に置きっぱなしにしても、すぐには腐らないように作る必要があります。

そこで活躍するのが防腐剤。防腐剤を配合することで菌の繁殖を抑え、化粧品が腐敗・変質するまでの期間を引き延ばしているのです。

保管環境や使い方にもよりますが、品質が安定する期間の目安としては、使用期限の記載がある場合を除いて「未開封で3年・開封後は1年」です。

例外として「油」は腐らない

例外として油は基本的に腐らないため、油分のみで構成された美容オイルなどは、防腐のための成分は必要ありません。

ただし、一見オイルのように見えても、植物エキスなどの腐りやすい成分が含まれている場合は、何らかの防腐対策が必要になります。



防腐剤の肌への影響・危険性

基本的には使用実績が長く、安全性も高い

化粧品への配合が認められている防腐剤にはさまざまな種類がありますが、今日もっともよく使われている「メチルパラベンエチルパラベンフェノキシエタノール」の3つは、使用実績が長く、安全性も高く評価されています

「パラベンフリー」を謳う化粧品が多数存在するのもパラベンが危険だからではなく、「旧表示指定成分のリストに掲載されていたせいで、消費者のイメージが悪いから」というのが主な理由です。

「旧表示指定成分」というのは、「ごく稀にアレルギー等の皮膚トラブルを起こす可能性のある成分」です。1980年に作られた古いリストのため、パラベンのように後に「安全性にほとんど問題ない」とされた成分も含まれています。

ほとんどの防腐剤には「殺菌作用」はない

「化粧品の防腐剤は、美肌に必要な皮膚常在菌も殺してしまうからよくない」という情報を、見聞きしたことがある人も多いかと思います。

ですが、化粧品に使われる防腐剤のほとんどには、「殺菌作用」はありません。即座に菌を殺すような強い作用はなく、「菌の繁殖を抑制・阻止することで、時間をかけて菌を減らし、最終的に死滅させる」という効き方が基本です。

こうした作用を「静菌」といい、「殺菌」に比べると非常に穏やかです。

ただし、例外的に「殺菌剤としての効果を併せ持つ防腐剤」も一部に存在します。デオドラント製品などに使われる「ベンザルコニウムクロリド」と、アクネ菌殺菌成分として知られる「イソプロピルメチルフェノール」です。

稀にアレルギー症状を起こす人がいる

化粧品に配合される防腐剤は、使用できる種類と配合上限が法律で制限されています。そのため、少なくとも国内の正規ルートで流通している化粧品の防腐剤は、ほとんどの人には問題のない成分です。(日本とは基準が異なる海外では、国内で使用禁止の防腐剤が使われることもあります。)

ですが、だいたいどんな成分にも「肌質・体質に合わない人」というのは出てきます。化粧品の防腐剤も稀にアレルギー症状などを起こす人がいるので、その人たちにとっては「肌によくない成分」ということになります。

また、体調不良などで肌の常在菌のバランスが乱れているときは、防腐剤によって肌に必要な善玉菌が減る可能性もあるでしょう。

肌の調子がよくない人は気を付けた方がよい

これまで普通に化粧品を使っていて特に問題がないのであれば、防腐剤についてそこまで神経質になる必要はありません。

もともと化粧品の防腐剤は法律で細かく規制されているので、メチャクチャな防腐剤の使い方をしている化粧品メーカーはないはずです。

ですが、体質や環境などで肌が敏感傾向に傾いているときは、多くの人にとって問題なく使える成分でも刺激になることもあります。

したがって、敏感肌の人や肌の調子がよくない人は、なるべくなら防腐剤を避けると安心です。



化粧品に使われる防腐剤の種類

パラベン

旧表示指定成分で、「パラオキシ安息香酸エステル」と書かれていたものがパラベンです。

パラベンには複数の種類があり、代表的なところでは抗菌作用が弱い順に「メチルパラベン」「エチルパラベン」「プロピルパラベン」「ブチルパラベン」などがあります。

少量で幅広い菌・微生物に効き、安全性の高さも実証されています。「たくさん入れなくても防腐できる」というところがポイントですね。

フェノキシエタノール

パラベンに比べると抗菌力は劣りますが、パラベンが効きにくいタイプの菌に効きます。効く菌の種類が違うため、パラベンとフェノキシエタノールが一緒に配合されることもあります。

その他の防腐剤

化粧品に使える防腐剤には他にも、安息香酸ナトリウム、サリチル酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ヒノキチオールなどがあります。



「防腐剤フリー」「パラベンフリー」でも防腐剤が入っている?

パラベン以外の防腐剤が入っている場合

「パラベンフリー」と書かれている製品の場合、「パラベン以外の防腐剤」が配合されていることがあります。パラベン以外でもっともよく見かけるのは、フェノキシエタノールです。

「パラベンに限らず、防腐剤全般が肌に合わない」といった人の場合は、成分表示をよく確認すると安心です。

防腐効果を持つ保湿剤などを使用している場合

「防腐剤フリー」と書かれている製品には、「化学添加物としての防腐剤」の代わりに、「静菌作用を持つ保湿剤や植物エキス」を配合している製品もあります。

こうした目的でよく使われる保湿剤は、「BG」や「ペンチレングリコール」、「1,2-ヘキサンジオール」、「1,3-プロパンジオール」です。

植物エキスなら「甘草エキス」や「ラベンダー花エキス」、「ローズマリーエキス」などが該当します。

これらの成分だけで防腐対策している製品もありますし、防腐剤の配合量を抑えるために、防腐剤と一緒に配合することもあります。

防腐剤を使っていなくても、これらの成分が合わない人は注意が必要です。

「キャリーオーバー成分」に要注意

成分表示を見れば、どんな成分が配合されている化粧品なのかだいたいは分かります。しかし、「キャリーオーバー成分」は記載義務がないため、書かないメーカーがほとんどです。

「キャリーオーバー成分」とは、「原材料の栽培・製造工程で、わずかに残る可能性のある成分」です。例えば、植物エキスを抽出するための「溶媒」などがそうです。

化粧品の原材料によっては、キャリーオーバー成分にパラベンなどの防腐剤が含まれることもあります。したがって、成分表示に防腐剤の名前がなくても、キャリーオーバー成分としてわずかに含まれていることがあるのです。

これはパッケージを見ても分からないので、情報が必要な場合はメーカーに問い合わせましょう。



防腐剤を使わない化粧品の特徴

使用期限の記載がある

もともと腐る心配が少ない製品は別として、例えば化粧水などの傷みやすい製品に防腐のための成分を入れない場合は、品質を安定させられる期間が極端に短くなります。

特に3年以内に変質する恐れがある製品については、使用期限の記載が義務付けられています

菌が入り込みにくい容器

防腐剤を使わない化粧品はカビや雑菌に弱いため、菌が入り込みにくいよう容器に工夫されていることが多いです。

開封されるまで密封状態が保たれる仕様の容器や、中身が空気に触れにくいエアレスポンプ容器などです。

ただし、防腐剤が入っている化粧品でもエアレスポンプなどが使われていることもあるため、見た目だけでは防腐剤無添加かどうかは判断できません。

まとめ

多くの化粧品にとって、防腐剤は菌の繁殖を抑えて変質を防ぐ上で、大切な役割を担っています。

化粧品に使用できる防腐剤は種類や配合上限が決められており、ほとんどの種類は即座に菌を殺すような強い作用はありません。肌に悪いイメージの強いパラベンやフェノキシエタノールも、実際は使用実績が長く、安全性が高く評価されているものです。

したがって、これまで問題なく化粧品を使えているのであれば、防腐剤に対してそこまで神経質になる必要はないでしょう。

ですが、防腐剤が肌に合わない人の場合は、成分表示に書かれない「キャリーオーバー成分」にも注意する必要があります。