スキンケアやメイクアップなど、さまざまな化粧品に配合されている植物エキス。成分表示に名前は書かれていても、どんな目的で配合されているのか詳しく明かされないことも多いため、「何の効果があるのだろう?」と疑問に思いながら使用している人もいるのではないでしょうか。
そこでここでは、化粧品成分としての植物エキスについて、種類ごとの効果を紹介します。植物エキスを含む化粧品を利用するときの、注意点も書いていきます。
化粧品の植物エキスについて知りたい人は、参考にしてください♪
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植物エキスとはどんなもの?
植物から抽出された物質
植物エキスとは、抽出溶媒に植物を浸すなどの方法で抽出された溶液や、それを乾燥させたもののことです。抽出溶媒にはエタノールやBGなどが使用されています。
植物エキスには、芳香成分のテルペン類やフラボノイドなどさまざまな物質が含まれており、その有用性が西洋では「メディカルハーブ」、東洋では「和漢生薬」として、民間療法の薬や化粧品に活用されてきました。
現在では、医薬品に承認されているものもあります。 また、一部の植物エキスには、薬用化粧品の有効成分に認められているものもあります。
配合量は1%以下がほとんど
化粧品への植物エキスの配合量は、1%以下であることがほとんどです。日本の法律では消費者の安全を確保する観点から、化粧品は人体への作用が緩やかであることが求められています。そのため、植物エキスの効能・効果が強力に出すぎるものは、化粧品としては販売できなくなってしまうのです。
長く使い続けても安全であること・製品の安定性を損なわないことを優先しなければならないため、1種類の植物エキスの配合量はごくわずかです。 また、植物エキスは溶媒で希釈された状態であることが多いため、そもそも化粧品原料の段階で、濃度は1%以下であるのが一般的です。
製品によっては、こうした制約の中でも効果を高めるため、同じような作用を持つ植物エキスを複数種類配合するなどの工夫が凝らされていることもあります。 しかし、植物エキスのほとんどは「有効成分ではない」ので、必ずしもメーカーが訴求するような効果が実感できるとは限りません。
植物エキスの種類ごとの効果
カンゾウ根エキス
化粧品表示名 |
カンゾウ根エキス |
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医薬部外品表示名 |
カンゾウエキス、カンゾウ抽出末、油溶性甘草エキス(2) |
部外品表示簡略名 |
甘草エキス、甘草抽出末 |
マメ科植物カンゾウの根および根茎から得られるエキスです。古くから傷薬などに用いられる漢方生薬の一種で、抗炎症・肌荒れ防止・ニキビ予防・抗アレルギーなどの作用を有します。
また、メラニン色素の生成を抑える働きもあるため、シミ・そばかす・色素沈着の予防にも役立ちます。
なお、原料となるカンゾウの主成分は、「グリチルリチン酸」です。グリチルリチン酸の誘導体である「グリチルリチン酸ジカリウム」や「グリチルリチン酸ステアリル」は、肌荒れ防止、ニキビ予防、フケ・痒み防止の有効成分として効果が認められています。
また、最近ではメラニンの生成を抑えてシミ・そばかすを防ぐブライトニング有効成分としても承認されました。
ハトムギ種子エキス
化粧品表示名 |
ハトムギ種子エキス |
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医薬部外品表示名 |
ヨクイニンエキス |
イネ科植物ハトムギの種子から得られるエキスです。角層の水分量を増やし、角層の細胞を構成する主要なたんぱく質でバリア機能に関わる「フィラグリン」の産生を促すことによる保湿作用を有します。
また、肌のターンオーバーを促進する作用や、抗アレルギー作用も認められています。化粧品原料メーカーの一丸ファルコスからは、肌荒れ改善効果が認められたという検証結果も報告されています。
コメヌカエキス
化粧品表示名 |
コメヌカエキス |
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医薬部外品表示名 |
コメヌカエキス |
部外品表示簡略名 |
米ヌカエキス |
米ぬかから抽出されるエキスです。糖アルコールやビタミンなどを含む成分で、保湿作用や抗酸化作用、角質剥離を促す作用を有します。
これらの作用によって、バリア機能の改善やくすみを改善する効果が期待できます。
ローズマリー葉エキス
化粧品表示名 |
ローズマリー葉エキス |
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医薬部外品表示名 |
ローズマリーエキス |
部外品表示簡略名 |
マンネンロウエキス |
植物エキスが含まれる化粧品に、高確率で配合されているエキスの一つです。シソ科の薬用植物である、ローズマリーの葉から抽出されます。
テルペン類とフラボノイドを含む成分で、抗酸化作用を有します。また、しわの原因となる肌の酵素「好中球エラスターゼ」の活性を阻害することによる、抗老化作用も認められています。
その他にも、製品自体の酸化防止のために配合されることもあります。
チャ葉エキス
化粧品表示名 |
チャ葉エキス |
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医薬部外品表示名 |
チャエキス(1)、チャエキス(2)、ウーロン茶エキス、紅茶エキス |
部外品表示簡略名 |
茶エキス-1、茶エキス-2 |
ツバキ科植物である、チャノキの葉から得られるエキスです。チャカテキンやカフェイン、テアニン、タンニン酸などを含む成分で、抗老化・抗酸化・抗アレルギー・皮脂抑制といった作用があります。
抗菌作用もあるため、ニキビケア化粧品などにも配合されます。
シソ葉エキス
化粧品表示名 |
シソ葉エキス |
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医薬部外品表示名 |
シソエキス(1)、シソエキス(2) |
部外品表示別名 |
ソヨウエキス(2) |
部外品表示簡略名 |
シソエキス-1、紫蘇エキス-1、シソエキス-2、紫蘇エキス-2、ソヨウエキス-2 |
シソ科植物である、シソの葉から抽出されるエキスです。ポリフェノールの一種である「ロスマリン酸」を含む成分で、抗アレルギー作用を有します。
オウゴン根エキス
化粧品表示名 |
オウゴン根エキス |
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医薬部外品表示名 |
オウゴンエキス |
シソ科植物コガネバナの根から抽出されるエキスです。フラボノイドを含む成分で、肌のメラニン生成に関わる「ET-1」という物質の産生を抑制する作用があります。
さらに、抗炎症作用や紫外線吸収補助作用も有しています。
イザヨイバラエキス
化粧品表示名 |
イザヨイバラエキス |
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医薬部外品表示名 |
イザヨイバラエキス |
バラ科植物イザヨイバラの果実から抽出されるエキスです。ビタミンCやタンニン、糖類などから構成される成分で、抗炎症作用や保湿・バリア機能改善、抗菌作用を有します。
保湿・バリア機能改善効果については、肌のセラミド合成を促進する作用によるものです。したがって、肌が自らうるおう力を育てたいときに適した植物エキスだといえるでしょう。
ツボクサエキス
化粧品表示名 |
ツボクサエキス |
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医薬部外品表示名 |
ツボクサエキス |
セリ科植物ツボクサの葉・茎から得られるエキスです。マデカッソシドなどのテルペン類が主成分です。 肌のコラーゲン産生を促すことで、ハリ・弾力を改善する効果が報告されています。
シカクリームで知られるようになった成分ですが、、脂肪細胞の産生を促す作用によって、唇の立体感や輪郭の明確さを改善する効果があるとされているため、リップケア製品に配合されることもあります。
なお、ナノ化されたツボクサエキスに限ってのことですが、メラニン生成抑制作用も認められているとのこと。
カミツレ花エキス
化粧品表示名 |
カミツレ花エキス |
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医薬部外品表示名 |
カモミラエキス(1) |
キク科植物ジャーマンカモミールの花から抽出されるエキスです。ジャーマンカモミールは代表的なメディカルハーブの一つで、消化器の不調や肌トラブルなどの治療に用いられてきた歴史があります。
カミツレ花エキスの主成分は、テルペン類とフラボノイドです。化粧品成分の効果としては、抗アレルギー作用と紫外線吸収作用を有します。
ローマカミツレ花エキス
化粧品表示名 |
ローマカミツレ花エキス |
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医薬部外品表示名 |
ローマカミツレエキス |
キク科植物ローマンカモミールの花から得られるエキスです。テルペン類とフラボノイドを多く含む成分で、抗糖化作用を有します。
糖化ストレスの原因物質であるAGEsの生成を抑えることで、糖化によって引き起こされるしわ・たるみ、シミ・くすみなどを改善する効果が知られています。
アーチチョーク葉エキス
化粧品表示名 |
アーチチョーク葉エキス |
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医薬部外品表示名 |
アーチチョークエキス |
キク科植物アーティチョークの葉から得られるエキスです。フェニルプロパノイドやテルペン類といった芳香成分と、フラボノイドを多く含みます。
アーチチョーク葉エキスの化粧品成分としての効果で一般にもっともよく知られているのは、毛穴を引き締める効果でしょう。 これは、肌のコラーゲンを分解するたんぱく質「NF-kB(エヌエフ-カッパービー)」の発現を抑える作用によるものです。
他にも抗アレルギー作用や、シミ・そばかすの改善効果も認められています。
ノイバラ果実エキス
化粧品表示名 |
ノイバラ果実エキス |
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医薬部外品表示名 |
エイジツエキス |
バラ科植物ノイバラの果実から得られるエキスです。フラボノイドやタンニン、カロテノイドを多く含みます。
角質細胞の生育に関わるたんぱく質「フィラグリン」の産生を促す作用によって、保湿効果をもたらします。
また、ヒスタミンの働きを抑えることによる抗アレルギー作用も確認されています。
オタネニンジン根エキス
化粧品表示名 |
オタネニンジン根エキス |
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医薬部外品表示名 |
ニンジンエキス |
部外品表示簡略名 |
人参エキス |
ウコギ科植物オタネニンジンの根から抽出されるエキスです。テルペン類や糖質、ビタミンB群などを主成分とするもので、漢方薬にも用いられています。
化粧品成分としては、角層の水分量を増やすことによる保湿作用や、皮脂抑制作用、コラーゲンの産生を促すことによる抗シワ作用が知られています。
また、育毛・白髪改善作用も有するため、ヘアケア製品にも多用されています。
オトギリソウ花/葉/茎エキス
オトギリソウ科植物オトギリソウの花・葉・茎から得られるエキスです。主にタンニンやヒペリシンを含む成分で、メラニンの生成を抑え、色素沈着を抑制する作用を有します。
他にも、抗アレルギー作用や抗炎症作用が化粧品に利用されることもあります。
広告表現では植物エキスの効果を謳えない
「広告」に該当する媒体で標榜できる化粧品の効果・効能は、法律でかなり細かく制限されています。 「有効成分」として配合しているものを除いては、成分についても具体的な効果を訴求することが難しいケースが多いです。
そのため、植物エキスの配合目的についても、建前上は「保湿成分・エモリエント・整肌成分・皮膚保護成分」のいずれかに分類されることがほとんどです。
そのせいで、例えば「ハリ肌成分の○○エキス」というコピーの下に、「○○エキス:保湿成分」という注釈が書かれていたりするため、消費者にとって非常に分かりにくい状態です。(実際には保湿効果がない成分まで、建前上は保湿成分ということにされていたりするので、そこも問題だと思います。)
こんな感じで、現状では化粧品広告から正確な情報を得ることは難しいので、配合されている植物エキスの効果を知りたいときは、「○○エキス 効果」などのキーワードで検索してみるとよいです。
植物エキスを使用するときの注意点
アレルギーのリスク
植物エキス配合というと、肌にやさしいイメージを持つ人も多いでしょう。ですが、実際は化粧品成分の中でも比較的、アレルギーのリスクが高い成分といえます。
安全性が高い物質だけを組み合わせられる合成成分に比べると、自然物に近い状態の成分である植物エキスは、より成分構成が複雑でアレルゲンになりやすいからです。
もっとも、植物由来成分としては濃度が低いため、精油などに比べるとアレルギーのリスクはそれほど高くないと考えられますが、アレルギー体質の人は注意が必要です。
アレルゲンそのものでなくても、アレルゲンの植物と同じ科の植物のエキスも要注意です。 例えば、桃・アーモンド・りんごなどバラ科の食べ物でアレルギーが出る人は、化粧品に含まれるバラ科の植物エキス「カニナバラ果実エキス」でも、症状が出る可能性があります。
濃度の見分け方
化粧品の成分表示は原則として、配合量の多いものから順番に記載します。そのため、たいていは「水などの基剤→訴求成分(美容成分)→防腐剤など製品の安定化のための成分→香料・着色料」という順番になっています。
しかし、例外として配合量が全体の1%以下の成分は、順番を無視して好きなところに書いてよい決まりになっています。 植物エキスはほとんどの場合1%以下の配合量なので、「特にアピールしたい成分だから一番目に書く」といったことも可能です。
しかし、植物エキスは肌への安全性の点からもコスト的にも、基剤より多く配合するということはあり得ません。 つまり、植物エキスに関しては、成分表示の前の方に書かれていたからといって、必ずしも配合量が多いとは限らないのです。
キャリーオーバー成分に注意
植物エキスが配合されている化粧品には、エキスを抽出するための抽出溶媒として使用した成分も、わずかながら含まれています。 このように、化粧品の原材料を生産・製造する工程から最終製品に持ち越された成分を、「キャリーオーバー成分」といいます。
そして、今のところキャリーオーバー成分については、成分表示に記載しなくてもよいことになっています。(メーカーの判断で書いてくれていることもあります。)
そのため、「成分表示には書いていないけれど、キャリーオーバー成分として微量のエタノールが含まれている」といった製品も存在しています。
したがって、抽出溶媒に使用されるエタノールやBGなどの成分に、微量でも反応してしまう人は注意が必要です。抽出溶媒となった成分が記載されているか分からない場合は、メーカーに確認すると安心です。
まとめ
化粧品に使われる植物エキスは種類によって効果が異なり、これまでにさまざまな効果が確認されています。
しかし、現在の日本の法律では、化粧品の広告に記載できる効果が限られているため、配合されている植物エキスにどんな効果があるのかを、広告から正確に知ることが難しい状況になっています。
また、化粧品に配合される植物エキスは濃度が非常に低く、ほとんどは有効成分でもないため、メーカーが謳うような効果が得られない場合もあります。
各商品の効果については、口コミを確認してみるとある程度様子を把握できるので、商品選びの際はメーカーの広告だけでなく、そうした情報にも目を通してみるとよいでしょう。