「しっかり寝ているはずなのに疲れが取れない」、「ベッドに入ってもなかなか寝付けない」、「寝ている間に夢をたくさん見てしまって、朝起きるとぐったり」。
「夜ぐっすり眠れない」という人は、とても多いですよね。一見元気に見える人の中にも、睡眠に問題を抱えている人は意外にたくさんいます。
そこでここでは、睡眠の質が低下する原因と改善方法について解説します。快眠ですっきりした毎日を送りたい人は、参考にしてください♪
眠りが浅い・寝付けない・・・睡眠の質が低下する原因
緊張・ストレス
眠れない原因の一つは、緊張・ストレスです。「明日のプレゼンが上手くできるか心配」、「嫌なことがあったので、そのことを考えてしまって寝付けない」といったケースですね。
「眠れないことがプレッシャーになって、ますます眠れない」という本末転倒な現象もよく起こります。
ですが、緊張・ストレスといっても、必ずしもネガティブな感情や出来事に起因するものばかりではありません。
例えば、子供が遠足前夜に興奮して眠れなくなるのもこのパターンに該当します。大人でも楽しい予定の前日・当日に、眠れなくなる経験を持つ人も多いでしょう。
体内時計・自律神経の乱れ
体内時計のリズムが乱れや、自律神経の乱れによっても眠れなくなることがあります。
健康なヒトの体は、就寝時には副交感神経が優位になるようにできています。副交感神経とは、「お休みモードに入るための神経」です。逆に、日中など活発に活動しているときは、交感神経が優位になることで、活動に適した体の状態が保たれるようになっています。
普通は意識しなくても副交感神経と交感神経が自動的に働き、適切なタイミングで「お休みモード」と「活動モード」が切り替わります。
しかし、ストレスなどで自律神経が乱れると、眠る時間になっても交感神経が優位なままでお休みモードへの切り替えができないため、心身の緊張が続いてしまって上手く眠れなくなるのです。
寝る直前までスマホを見ている
近頃は、寝る直前のスマホいじりのせいで眠れなくなる人も増えています。
睡眠に関わる体の機能は自律神経だけでなく、「メラトニン」というホルモンの分泌も大きく影響します。
「メラトニン」は夜暗くなると脳から分泌されるホルモンで、心身をお休みモードに切り替える働きがあります。
しかし、寝る前にスマホの強い光を浴びると、脳がまだ昼だと錯覚するのでメラトニンが分泌されなくなります。その結果、夜になっても目が冴えてしまって眠れなくなるのです。
また、スマホからは音や文字など、たくさんの情報が脳に入ってきます。そのことも脳を興奮させるので、寝る前はよくありません。パソコンやテレビ、タブレットも同様です。
喫煙・カフェインなどその他の原因
煙草やカフェインも脳を覚醒させるので、寝る前は控えた方がよいといわれています。
また、「寝具が体に合わない」、「寝室が明るすぎる、気温・湿度が不快、騒音がある」など、環境が原因で眠れなくなるケースもあります。
更年期障害で眠れなくなることも
更年期障害の症状で眠れなくなる人もいます。女性だけでなく、男性にも更年期が原因の不眠が現れることがあります。
これは、更年期は性ホルモンの分泌量が低下することで、自律神経が乱れやすくなるからだと考えられています。自律神経が乱れると「お休みモード」と「活動モード」の切り替えが上手くできなくなるのは、前述の通りですね。
さらに、もっと年齢が上がって高齢になると睡眠時間が5~6時間まで短くなり、眠りも浅くなるのが一般的です。これは基礎代謝などの消費エネルギーが減る分、睡眠で補わなければならないエネルギーも少なくなるからです。
高齢者の睡眠量が減るのは自然なことなので、日中の生活に支障がないならそのままで問題ありません。
睡眠の質を向上させるための改善方法
良質な睡眠のためのポイントは、体と心を「お休みモード」にしっかり切り替えることです。
したがって、眠りが浅い・寝付けないなどの症状を改善するには、「お休みモードへの心身の切り替え」を妨げるものを排除し、リラックスを促すのが近道といえます。
寝る直前の食事・入浴を避ける
胃の中に食べ物が残っていると、消化のために胃腸を動かし続けなければならないため、体はお休みモードになれません。ぐっすり眠るためには、食事は寝る3時間前までに済ませるのが理想です。
どうしても寝る時間と食事の時間が近くなってしまう場合は、なるべく消化のよいメニューを少しだけ食べるよう心掛けましょう。
また、ヒトの体は入眠前のお休みモードに切り替わっていくときに、体の中心部の温度「深部体温」が下がります。
逆に体温が上がっていると眠れないので、入浴は就寝2時間前までに済ませましょう。難しい場合は湯温をぬるめにし、体温を上げすぎないようにするのがベターです。
寝る前はスマホ・刺激物を控える
寝る前はスマホやカフェイン、アルコール、煙草などの刺激物も控えましょう。安眠のためには煙草は寝る2時間前、カフェインも遅くとも4時間前までにするとよいといわれています。
こうした嗜好品の制限が辛いようなら、寝る前はCBDリキッドなどの睡眠を妨げないものに置き換えるとよいでしょう。
スマホやタブレットも、ベッドから手が届かない場所へ置きます。読書にkindleなどの電子書籍を利用する人も、ベッドでは紙の本を読みましょう。紙の本なら、ブルーライトで目が冴える心配がありません。
就寝前に軽いストレッチをする
就寝前に軽いストレッチを行うのも効果的です。筋肉の緊張がほぐれるので体がリラックスできますし、深部体温もスムーズに下がりやすくなります。
ただし、あまり激しい運動は活動モードの交感神経が優位になってしまうため、あくまで「軽め」にとどめることが大切です。
なお、適切な運動の強度には、年齢などによって個人差もあります。寝る前であれば心臓がどきどきせず、ゆったりした気分になれる程度を目安にするとよいでしょう。
また、日中もなるべく体を動かすようにすると、夜眠れるようになります。ジョギングなどの本格的な運動でなくても、家事で体を動かす程度でも効果があります。
就寝に適した環境を作る
環境のせいで眠れない人は、できる範囲で環境も見直してみましょう。寝具は清潔で季節に合ったものを用意し、温度・湿度も不快でない範囲に調節します。
枕や敷布団、マットレスは、適度に硬さがあって体が沈み込まないものがおすすめです。低反発素材などの体が沈むものは、寝返りが打ちにくいので体が疲れてしまいますし、姿勢も悪くなります。
パジャマや肌着もゆったりしていて、肌触りのよいものを着用すると快適です。
部屋の照明については、常夜灯か豆電球程度の薄明りにするか、真っ暗な方が落ち着く人は真っ暗にして構いません。ただし、真っ暗にしたい場合は防災・防犯のため、手元に懐中電灯を置いておきましょう。
無音だと眠れない人は小さく音楽を鳴らす
安眠のためには、暗く静かな環境を作るのが基本です。ですが、「無音だとかえって眠れない」という人もいますよね。
その場合は、ゆったりした音楽を小さく鳴らしておくとよいでしょう。あまりテンポが速い曲だと脳が目覚めてしまうので、眠気を誘うようなゆっくりしたテンポの音楽が望ましいです。小鳥の声や小川のせせらぎなどの環境音を集めた音源もおすすめです。
睡眠薬は最後の手段
眠れない状態がしばらく続くと、睡眠薬の服用を考える人もいるでしょう。ですが、睡眠薬には副作用のデメリットがあります。一度飲み始めると、耐性の問題で徐々に強い薬に移行していく場合も多く、止めるときに離脱症状が出る問題もあります。
また、飲み慣れると効きにくくなることから、長期服用している人の中には、かなり強めの薬でも入眠に何時間もかかる人が少なくありません。さらに、寝ている間もずっと夢を見ている状態になるなど眠りが浅いことも多く、睡眠薬=ぐっすり眠れる魔法の薬というイメージからは程遠いのが実態です。
また、長年睡眠薬を飲んでいる人には、自分で眠る力が失われてしまっている人も多いです。睡眠薬に対する依頼心を持つようになることで、心身をお休みモードに持って行くために必要な生活習慣や自制心が失われてしまうのです。
したがって、睡眠薬は最後の手段と考えるのが賢明です。
睡眠サプリメントや漢方薬を活用する
「眠れないから何かお薬を・・・」という人は、睡眠薬を処方してもらう前に「睡眠サプリ」と呼ばれるサプリメントを試してみるとよいでしょう。
睡眠薬に比べると効果は緩やかですが、比較的副作用が少なく、止めるときの離脱症状もありません。
睡眠サプリの主な成分には、ストレスを軽減する「GABA」や、神経の高まりを抑えて深部体温を下げる「グリシン」などがあります。
また、漢方薬にも眠れないときによいものが何種類かあります。西洋薬に比べると効果が穏やかなことが多く、重篤な副作用も稀です。必要に応じて、体質に合ったものを取り入れてみるとよいでしょう。
眠れないときは無理に寝なくても死なない
眠ることにこだわりすぎると、眠れないこと自体がストレスになって、ますます眠れなくなってしまいます。翌日に仕事や大事な用事を控えていれば、なおさらでしょう。
ですが、何日か眠れないくらいでは、人は死にません。私自身もかつて長期の不眠に悩んだ経験がありますが、そのときに医師に言われたのは、
不眠で死ぬ人はいないので、安心してください。人間の体は、いよいよ寝ないと無理だという段階になったら、ちゃんと眠るようにできていますから
ということでした。
眠れないということは「体的にはまだ寝なくて大丈夫」ともいえるので、どうしても眠れそうになければ無理に寝なくても構いません。ただし、翌日は車の運転などの危険を伴う作業は控えましょう。
眠れない原因が病気の場合は、病気の治療も必要
眠れなくなる代表的な病気
ここまではごく一般的なケースについて、眠れない原因と改善方法を述べてきました。ですが、何らかの病気の症状として、不眠が現れる場合もあります。
眠れなくなる病気の代表的なものには、以下のものが挙げられます。
- 不眠症
- 睡眠時無呼吸症候群
- むずむず脚症候群
- 周期性四肢運動障害
- 概日リズム睡眠・覚醒障害
- うつ病など心の病気
病気が原因で眠れない場合は上で述べた改善方法と併せて、病気の治療も必要です。
個々の病気については長くなるのでここでは割愛しますが、心の病気は患者数が多く、緊急性が高いケースも含まれるため、簡単に対処法を書いておきます。
心の病気は専門医に相談するのが基本
心の病気の代表的な症状の一つに、睡眠障害があります。眠れない原因として、心の病気が疑われる場合は自分だけで解決しようとせず、専門医に相談した方が安心です。特に以下の症状が見られるケースは命にかかわる可能性もあるので、早めの受診をおすすめします。
- 自分や他人を傷付けたい気持ちが強い
- 自殺したい衝動に駆られることがある
ただし、心の病気を取り扱う医療機関は初診の予約に時間がかかることも多いため、緊急のSOSには対応が難しい面もあります。
病院ですぐに診てもらえないときは、厚生労働省のサイトにも電話or SNSで心の悩みを相談できるページがあります。
リンクを貼っておくので、必要に応じて活用してください。
自傷・他害の危険性があるときは迷わず110番
上記の相談窓口も繋がらない場合で、自分や他人の命が極めて危険と思われるときの最終手段は、「110番」です。これならすぐに繋がります。ただし、警察も限られた人員&多忙な中での対応となるため、単に眠れないだけで通報するのは厳禁です。
しかし、「今すぐ自傷・他害・自殺しそうな感じがするけれど、110番してよいか分からない」というときは、事が起こる前に迷わず通報してください。
警察で「自分や他人を傷付ける恐れあり」と判断されれば、一時保護した上で保健所に連絡してもらえます。治療の必要がありそうなら、保健所から医療機関にも繋いでもらえます。
なお、すでに死傷者が出ている場合は、119番通報で救急車を要請するのが基本です。
まとめ
スマホやストレスなど、眠れなくなる原因は人によってさまざまですが、「心身のお休みモードへの切り替えが上手くできなくなっている」という点は共通する場合が多いです。
したがって、睡眠の質を改善するには、「お休みモードへの心身の切り替え」を妨げるものを排除し、リラックスを促すことが大切です。
食事や入浴のタイミングなど、毎日の小さなことが意外に睡眠に影響するので、眠れない人は記事を参考に生活習慣を見直してみましょう。
なお、病気が原因で眠れなくなっている場合は、病気の治療も併せて行ってください。