冬の終わりとともに、今年も徐々に紫外線が強まってきましたね。近年トレンドの紫外線防止成分といえば、酸化チタンや酸化亜鉛の「紫外線散乱剤」。
肌にやさしいイメージがあるので人気ですが、実際は「紫外線吸収剤」が使われている日焼け止めクリームやファンデーションもたくさん売られています。
「紫外線吸収剤」と「紫外線散乱剤」は、本当はどちらがよいのでしょうか?
ここではメリット・デメリットを比較しながら、「紫外線吸収剤」と「紫外線散乱剤」のどちらを選ぶべきかを解説します。
紫外線防止成分について正しく知りたい人は、参考にしてください♪
紫外線「吸収剤」の特徴とメリット・デメリット
紫外線「吸収剤」の特徴
「紫外線吸収剤」とは紫外線を吸収し、化学反応によって熱など別の弱いエネルギーに変化させることで、紫外線が肌の細胞に浸透することを防ぐ成分です。
「紫外線を吸収する」と聞くと、「何だか恐ろしげな未知のもの」というイメージを持つ人もいるでしょう。ですが、「特定の光を吸収する成分」は数え上がればキリがないほど、私たちの身近にたくさんあふれています。
例えばリンゴが赤く見えるのは、リンゴの皮に緑や青など「赤以外の色の光」を吸収する成分が含まれていることで、赤い光だけが反射するからです。
同様に青いシャツには、「青以外の色の光」を吸収する成分が含まれているので、私たちの目には青く見えます。
紫外線「吸収剤」の種類
現在使用されている主な紫外線吸収剤は、「オキシベンゾン」「メトキシケイヒ酸エチルヘキシル」、「t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン」などです。いずれも化学的に合成された成分という意味で、「ケミカル」と呼ばれます。
なお、地上に届く紫外線には「肌が赤くなるUV-B波」と、「肌が黒く焼けるUV-A波」の2つがあります。
紫外線吸収剤は種類によって、「UV-B波の吸収にすぐれているもの」と「UV-A波の吸収にすぐれているもの」が存在します。
紫外線「吸収剤」のメリット
紫外線吸収剤のメリットは何といっても、紫外線防止効果の高さです。少量でもしっかり紫外線を防いでくれるので、屋外でのスポーツやレジャーにも安心です。
透明なテクスチャーで白浮きしないことも、大きなメリットの一つ。たっぷり塗っても白くならないので、肌色や仕上がりを気にせずに使えます。日焼け止め特有のキシキシ感がないのも魅力です。
紫外線「吸収剤」のデメリット
肌の上で化学反応する性質上、敏感肌の人には刺激になることがあります。紫外線吸収剤自体も化学物質のため、化学物質に敏感な人には不向きでしょう。
昔に比べて皮膚刺激が少ないものが使われるようにはなりましたが、デリケートな肌質の人は注意が必要です。
また、紫外線吸収剤は化学反応するごとに分子が壊れていくので、塗って時間が経つと紫外線を防ぐ力が弱くなります。したがって、長く効果を持たせるには、特にこまめな塗り直しが必要です。
さらに、紫外線吸収剤がサンゴにダメージを与えることも分かってきています。そのため一部の国や地域では、紫外線吸収剤が入った日焼け止めを規制する動きも出ています。
紫外線「散乱剤」の特徴とメリット・デメリット
紫外線「散乱剤」の特徴
「紫外線散乱剤」は、紫外線を反射・散乱させることで、紫外線が肌に浸透するのを「物理的に防ぐ」成分です。
肌にやさしいイメージがあるため、近年の日本では「紫外線散乱剤」が主流になっています。
また、米国でも海洋生物や環境への影響を考えて、「紫外線散乱剤」を使用する製品が増えつつあるようです。
紫外線「散乱剤」の種類
紫外線散乱剤としてよく使われているのは、「酸化チタン」と「酸化亜鉛」です。金属由来の成分で化学的に合成されたものではないため、「ノンケミカル」と呼ばれます。
白い粉体なので、ファンデーションなどの「白色顔料」としても使われています。
紫外線「散乱剤」のメリット
紫外線散乱剤はメイクアップ製品の顔料としても使われる低刺激な成分で、化学反応によって紫外線を防ぐ仕組みではないため、肌への負担が少ないことが大きなメリットです。
「UV-A」、「UV-B」の両方を防げるのもメリットの一つ。化学反応せず、構造が壊れにくいため、「吸収剤」に比べると効果も長持ちします。
ただし、汗や皮脂、こすれなどで落ちると効果が下がるため、定期的な塗り直しは必要です。
紫外線「散乱剤」のデメリット
紫外線散乱剤のデメリットは、「白浮き」と「きしみ」です。原料の粉体自体が白い色をしているため、肌に塗ると白く残りやすいのです。
近年は原料の粉体を微粒子化できるようになったことで、白浮きはだいぶ軽減されました。しかし、それでも「吸収剤」のように無色透明に仕上げることはできません。
また、「酸化チタン」には、紫外線などの光に当たると強い酸化力を発揮する問題もあります。
「光触媒作用」と呼ばれるもので、酸化チタンを塗った状態で光を浴びると、「肌の上で活性酸素が発生→雑菌や化学物質などが分解される」という現象が起こってしまうのです。
こうした現象が、肌に刺激になる場合もあるといわれています。
化粧品工場で働く人に健康リスクが生じる可能性
紫外線散乱剤として使われる「酸化チタン/酸化亜鉛」が微粒子化されるようになったことで、これらの原料を扱う工場で働く人の健康リスクも懸念されています。
微粒子化といっても肌に浸透できるほどの小ささではないため、私たち消費者が普通に使用する分には問題ありません。
しかし、製品に配合する前の粉体の状態の場合は、呼吸によって肺に侵入する可能性が考えられます。
そのため、微粒子化された粉体が舞う工場で働く人の安全確保が課題になっています。
なお、微粒子化された「酸化チタン/酸化亜鉛」を不安視する人が多く、製品化するためのルールも厳しいことから、ヨーロッパでは「紫外線吸収剤」が主流です。
紫外線「吸収剤」と「散乱剤」の比較表
紫外線「吸収剤」 | 紫外線「散乱剤」 | |
---|---|---|
紫外線防止効果 | ◎ | ○ |
肌へのやさしさ | △ | ○ |
仕上がり | 無色透明 | 白浮きが気になる場合アリ |
使用感 | なめらか | キシキシした感触 |
海外でも使えるか |
△ |
○ ※他の配合成分によっては使えない場合アリ。 |
紫外線「吸収剤」「散乱剤」、どちらを選ぶべき?
日焼け止めクリームなどに含まれる紫外線防止成分は大まかに、3パターンの使い方がされています。
- 紫外線「吸収剤」のみを配合
- 紫外線「散乱剤」のみを配合
- 「吸収剤」と「散乱剤」を両方配合
「吸収剤」「散乱剤」のどちらにも長所・欠点があるため、どちらが優れているとは一概にはいえません。肌質や成分の品質などによっても、どちらを選ぶべきかが変わってきます。
日焼け止め効果を重視するなら「紫外線吸収剤」
日焼け止め効果を重視するのであれば、「紫外線吸収剤」が適しています。
紫外線吸収剤は皮膚刺激が強いイメージがありますが、近頃は紫外線吸収剤をシリコーンなどでコーティングすることで、肌への刺激を抑える技術も開発されています。
そのため昔と違い、紫外線吸収剤が配合されているからといって、必ずしも刺激が強いとは限らなくなってきています。ですが、絶対大丈夫とも言い切れないため、肌との相性が心配な人は、サンプルなどでパッチテストをしてみるとよいでしょう。
なお、紫外線吸収剤は時間とともに紫外線防止効果が低下していくため、使用する際は特にこまめな塗り直しが必要です。
肌へのやさしさを重視するなら「紫外線散乱剤」
肌へのやさしさを重視するなら、「紫外線散乱剤」がおすすめです。
ですが、人によっては「散乱剤」が合わないこともあるため、すべての人に肌トラブルが起こらないわけではありません。こちらも必要に応じて、パッチテストをしてから使うと安心です。
また、紫外線散乱剤は問題なく使えても、他に刺激の強い成分が配合されていることもあります。敏感肌の人や苦手な成分がある人は、成分表示をよく確認しましょう。
化粧水などにも紫外線吸収剤が入っていることがある
記事内容からは少し逸れますが、化粧水などの日焼け止め効果のない製品にも、紫外線吸収剤が入っていることがあります。これは、製品自体が紫外線によって劣化するのを防ぐためです。
化粧品成分の中には紫外線に弱い成分があり、そうした成分が使われている製品には、変質を防ぐ目的で少量の紫外線吸収剤が配合されていることがあるのです。
日焼けを防ぐ目的のときとは違い、配合量はごくわずかです。ですが、紫外線吸収剤にアレルギーがあるなど、少量でも反応してしまう人は注意が必要です。
まとめ
少し前までは「紫外線吸収剤」は皮膚刺激が強いとされていました。ですが、近頃は肌への刺激を抑えるための技術が開発されているので、「紫外線吸収剤」が配合されていても必ずしも刺激が強いとは限りません。
また、逆に肌にやさしいとされる「紫外線散乱剤」が合わない人もいます。
紫外線防止効果や仕上がり、使用感も異なりますし、どちらがよいかはケースバイケースなので一概にはいえません。
記事を参考に、肌質や利用シーンなどを踏まえた上で自分に合った製品を選んでくださいね。