ほとんどの肌トラブルは保湿で解決できる?保湿の効果と正しいやり方

この記事を書いた人
小鳥遊 文子
コスメコンシェルジュ

【保有資格】 ・2022年~:日本化粧品検定1級 ・2023年~:特級コスメコンシェルジュ/化粧品成分上級スペシャリスト(化粧品成分検定1級) 化粧品を信仰しない、フラットな目線からの記事作成を心掛けています。

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シミ・そばかすやしわ、ニキビなど、肌の悩みが生じるとまず思い浮かぶのは、「肌悩みに対応した、特別な成分のスキンケアを買わなくちゃ!」ということではないでしょうか?

ですが、ほとんどの肌トラブルは、保湿が解決策の基本です。シミ取り効果などの特別な機能を持った化粧品を熱心に使っても、保湿がしっかりできていないと十分な効果を発揮できない場合が多いのです。

そこでここでは、保湿の効果と正しいやり方について、改めて一緒に見直していきましょう。




肌は乾燥するとどうなる?

うるおいに満ちた肌はトラブルが起きにくい

うるおいに満ちた健康な肌は、ぴったりと隙間なく並んだ角質細胞と皮脂膜が、外部からの異物やウイルスの侵入を防いでいます

そして角層の内側でも、「細胞間脂質」や「NMF(天然保湿因子)」といったうるおい成分が肌内部を保護しています。 こうした肌が自身を守る働きをまとめて、「バリア機能」と呼びます。

うるおいが行き渡っていることで一つひとつの細胞がすこやかなので、ターンオーバーなど肌全体の機能もスムーズに働きます

つまり、うるおいに満ちた肌というのは、必要な機能がきちんと働いているのでトラブルが起きにくく、見た目もハリ・つや・透明感があって美しく感じられるものなのです。

肌が乾燥するとバリア機能が低下

一方、乾燥した肌は角層細胞がめくれて隙間ができてしまうため、異物・ウイルスが侵入しやすくなります。こうした状態の肌は、皮脂膜のガードもあまり機能していないことが多いです。

異物が侵入しやすい状態ということは、逆に肌内部のうるおいが逃げやすい状態でもあります。そのため、放置するとますます乾燥が進み、肌のバリア機能も低下していきます。

肌の機能が衰えるとトラブルの原因に

乾燥によって肌の機能が衰えると、さまざまなトラブルを引き起こします。乾燥そのものによるシワや肌荒れだけでなく、バリア機能の低下がニキビや敏感肌なども招きます。

また、肌のうるおいが不足するとターンオーバーも滞るため、メラニン色素が排出されにくくなって肌に蓄積し、シミ・そばかす・色素沈着ができやすくなります。

さらに、水分・油分の不足によってつやや透明感が失われることで、見た目の美しさや若々しさも損なわれてしまいます。




肌トラブルのほとんどは、保湿が解決策の基本

保湿が改善に役立つ肌トラブルの例
  • シミ・そばかす・くすみ
  • しわ
  • 大人ニキビ
  • ニキビ跡(色素沈着・クレーター)
  • 敏感肌

肌の乾燥がさまざまなトラブルを引き起こす以上、ほとんどの肌トラブルは保湿が解決策の基本といえます。

高価なシミ消し成分やしわ取り成分をいくら使ったところで、保湿が足りていない状態では肝心の肌自体がきちんと働いていないため、十分な効果を発揮することができません。

大人ニキビも同じです。抗炎症成分などを使えばそのときはニキビが落ち着きますが、根本的にニキビができにくい強い肌を作るには、保湿によってバリア機能を正常に戻すことが重要になってきます。

例外的に、思春期ニキビは一時的に肌を乾燥させた方が治りやすい場合もあります。

正しい保湿のやり方

基本は「水分→油分」

スキンケアにおける保湿の基本は、「水分を与えてから油分でフタ」です。順番が逆だと水分が油で弾かれてしまうので、必ず先に水分→油分の順番で塗ります

昔はスキンケアの順番や使用アイテムがある程度決まっていましたが、今はさまざまなアイテムが売られているので、自分に合ったものを選んで組み合わせればよいです。

脂性肌や混合肌の人であれば、オールインワンジェルで肌に合うものがあればそれだけでもよいですし、「化粧水+乳液」などの組み合わせも、比較的油分が少ないので使いやすいでしょう。

乾燥が気になる肌質の人は、水分・油分ともにしっかり補います。化粧水もしっとりした感触のものが蒸発しにくくおすすめです。

しっかり保湿するなら「美容液」を主役に

特にしっかり保湿したい人や、「スキンケアしても乾燥が気になる」という人は、美容液を主役にスキンケアを組み立てると効率がよいです。

「美容液」に明確な定義はないため、メーカーや製品によっても品質がまちまちですが、一般的な傾向として、美容液が一番、保湿力や機能にすぐれている場合が多いのです。

そのため、「お小遣いが少ないから、お高いスキンケアをフルラインで揃えるのは難しい」というときも、高価なブランドからは美容液を優先的に買い、足りないアイテムはプチプラで賄うのがおすすめです。

特に、以下の成分が配合されている美容液は、もともとの肌のうるおいに近く保湿力が高いので、乾燥が気になる人に向いています。

  • セラミド
  • アミノ酸
  • ヒアルロン酸
  • スクワラン
  • 油脂(シア脂、マカデミア種子油、オリーブ果実油など)

刺激の強い成分は極力避ける

「肌の機能を取り戻すことで、肌トラブルの改善を図る」という観点から考えるなら、刺激の強い成分は極力避けた方がよいでしょう。

悩みを抱えている肌の多くは、何らかの理由で保水力やバリア機能などが衰えている状態です。人間に例えるなら、風邪や病気で弱っている状態といえます。

したがって保湿ケアでうるおいを与えると同時に、刺激を控えてやさしく扱うことで、回復を助けることがトラブル改善への近道です。

ゴシゴシ洗いなどの物理的な刺激を避けることはもちろんですが、ピーリングや高濃度のエタノールなどの負担がかかる成分も避けた方が、肌の回復が早まります。

洗いすぎない・乾燥させない

肌のうるおいや機能を回復させるには、「洗いすぎない・乾燥させない」ことも大切です。いくら保湿ケアを頑張っても、他のところで肌を乾燥させれば効果が半減してしまいます。

洗顔料を使うのは、脂性肌の人で1日2回まで。乾燥肌の人や混合肌の人は、少なくとも朝の洗顔は水かぬるま湯ですすぐだけで十分です。ベタつきが気になるようなら、先にティッシュで皮脂を抑えておきましょう。

特に乾燥肌の人の場合は、洗顔料はほぼ必要ないケースもあります。

そして洗顔・入浴後は、肌が乾燥する前に保湿をしましょう。

また、紫外線を浴びることでも肌が乾燥するので、紫外線対策は通年必要です。




「保湿すると乾燥を招く」「化粧水は意味なし」という意見について

この記事は「肌トラブルの解決策の基本は保湿」という趣旨で書いています。ですが、世の中には「保湿するとかえって乾燥を招く」「化粧水は意味なし」とする意見もあります。

そのため、「そもそも本当に保湿するべきなのか?」というところで迷っている人もいると思います。

そこでここからは、保湿を疑問視する意見に対して、コスメコンシェルジュとしての私なりの見解をまとめてみます。

化粧水単体での使用を前提とした否定は無意味

化粧水を単体で使用する前提で「化粧水は時間が経てば蒸発してしまうのだから、塗っても意味がない」という人がいます。

しかし、この意見は「ほとんどの人は油分を重ねることで蒸発を防いでいる」という重要な事実を見落としています

脂性肌の人などがベタつきを嫌うために、化粧水のみでスキンケアを終わらせることはあるでしょう。そうしたケースでは化粧水自体も肌に残りにくいものを選ぶ傾向があるので、確かに使用する意味があまりないかもしれません。

ですが、だからといってすべてのケースに対して、化粧水の使用を無意味とするのは早計です。

すべての化粧水がすぐに蒸発するとは限らない

すべての化粧水が短時間で蒸発するという前提も間違いです。 揮発させることで浸透性を演出しているものなど、「すぐに蒸発するので水分を補う効果が低い化粧水」は実際に存在します。しかし、そうした製品はごく一部です。

化粧水にはグリセリンなどの「保湿剤」と呼ばれる成分が含まれているのが一般的ですが、「保湿剤」は水(H2O)に構造が似た「OH(水酸基)」を含むため、水とゆるく結びつく性質があります。

そのため、揮発のためのエタノールが含まれていないもので、「保湿剤」の配合量が多いものは、化粧水であっても水分の蒸発が緩やかです。

「保湿剤」に分類される主な成分には、グリセリン、BG、DPG、ヒアルロン酸などがあります。

加齢などで不足した水分を補うことは必要

皮膚に塗った水分が肌内部まで入り込むことはないのだから、スキンケアでの水分補給は無駄」とする意見もあります。

確かに若く皮脂膜がしっかりした肌の場合は、化粧水などの水分は弾かれてしまって肌に入って行かないことがあります。 こういうケースの場合は肌からの水分補給はあまり意味がないといえそうですし、一部の人が指摘するように、皮脂になじむ油分だけを補えば足りることもあるかもしれません。

ですが、少なくとも加齢などで水分が不足している肌の場合は、スキンケアで水分を与えることも必要です。 そういう肌の場合はスキンケアが皮脂に弾かれてしまうということも少ないので、化粧水の保湿効果が出やすいです。




界面活性剤で浸透させるタイプのスキンケアは要注意

皮脂膜で成分が弾かれることへの対策として、「界面活性剤の作用によって肌のバリア機能を突破し、成分を浸透させる」という考え方のスキンケア製品が存在します。

肌への浸透を助ける目的の界面活性剤には、「非イオン界面活性剤」と呼ばれるものを使用するのが一般的です。乳液の乳化剤などによく使われるもので、肌の上でイオン化しないので皮膚刺激が少ないとされます。

ですが、バリア機能を突破するほど高濃度なものは肌に負担がかかる可能性があるため、そういう処方の製品で無理に保湿することで、乾燥などのトラブルを招くことは考えられます

「非イオン界面活性剤」には、「~ソルビタン」や「~ポリグリセリル」などがあります。

保湿がかえって乾燥を招く理由①

対策方法
  • 化粧水は肌全体がひんやりする程度の量を目安に(多すぎても少なすぎてもダメ)
  • スキンケアを重ねるときは、前のアイテムが浸透してから

保湿するとかえって乾燥を招く」とする意見もあります。これについては、いくつか思い当たることがあります。

一つは、「化粧水の付けすぎはよくない」という意見について。これはおそらく、多量の水分によって肌がふやけることが問題なのだろうと思われます。 肌がふやけている状態というのは、肌表面がやわらかくなりすぎて外的刺激に弱い状態です。したがって、あまり長い時間その状態にしておくのは確かによくないでしょう。

また、多量の化粧水を付けたあと、乾くのを待たずにクリームなどを重ねた場合、水分で浮いてしまって保護膜を形成できないため、化粧水だけでなく肌にもともとあった水分も、どんどん蒸発してしまいます。

保湿がかえって乾燥を招く理由②

対策方法
  • 肌はやさしく扱う(叩かない・こすらない)
  • 刺激が強い成分・肌に合わない成分は避ける

「保湿するとかえって肌の乾燥を招く」という意見の理由として、もう一つ思い当たるのは、間違ったお手入れ方法による摩擦などの「物理的な刺激」です。

化粧水をなじませようとして肌を強く叩いたり、クリームを肌に塗りこもうとしてゴシゴシこすったりする・・・などの間違ったやり方での保湿では、乾燥などのトラブルを招くことは間違いありません。

程度によっては、「保湿しない方がマシ」ということもあるでしょう。

また、刺激が強い成分や肌に合わない成分を使うことで、乾燥させてしまうこともあります。特に「肌に合わない成分のせいで乾燥する」というケースは、無自覚なものを含めるととても多いです。

発言者の人物像を見て情報を判断する

保湿の是非を含めて美容に関する情報は、いろいろな考え方の人がいろいろなことを言っています。その中にはまったく正反対の意見もあるので、「一体どちらが正しいの?」と迷うこともあるでしょう。

最終的には肌質や感じ方などの個人差も大きいため、試してみてよいかどうかというところになります。ですが、情報収集の段階である程度見極めたいのであれば、発言者の人物像を見るとよいです。

特にあまり極端な意見は、「知識や経験が少なく、認知がゆがんだ人」が間違った思い込みで発信している場合も多いため、専門家を名乗る人の意見であっても注意が必要です。

また、化粧品メーカーが自社の商品の宣伝につなげるために、わざと情報をゆがめていることもあります。

まとめ

うるおいに満ちた肌は外部刺激に強く、トラブルが起きにくい状態です。逆に肌が乾燥すると、バリア機能やターンオーバーなどの肌機能が正しく働かなくなることで、シミやしわ、ニキビなどさまざまなトラブルを引き起こします。

したがって、ほとんどの肌トラブルは、保湿によって肌の機能を正常な状態に整えることが根本的な解決策といえます。シミ取り成分などの機能性成分も、しっかり保湿されてすこやかな肌の方が効果を発揮しやすいです。

肌トラブルの予防・改善につながることで、スキンケアのコスパもよくなるので、自分に合ったアイテムで根気よく保湿ケアを続けてみてくださいね。