ダチョウ抗体の化粧品。肌への効果・安全性・副作用についてまとめました

この記事を書いた人
小鳥遊 文子
コスメコンシェルジュ

【保有資格】 ・2022年~:日本化粧品検定1級 ・2023年~:特級コスメコンシェルジュ/化粧品成分上級スペシャリスト(化粧品成分検定1級) 化粧品を信仰しない、フラットな目線からの記事作成を心掛けています。

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ダチョウ抗体を知っていますか?ダチョウ抗体は日本の獣医師によって製造方法が確立されたもので、主に医療や畜産の分野で活用されていますが、化粧品成分としても利用されているのだそう。

そこで今回は、化粧品成分としてのダチョウ抗体について、肌への効果と安全性・副作用をまとめました。

ダチョウ抗体を使った化粧品に興味がある人は、参考にしてください♪ダチョウ抗体について簡単に知りたい人にもおすすめの記事です。

この成分に注意が必要な人
  • 鶏卵アレルギーがある人

ダチョウ抗体とは?なぜダチョウなの?

ダチョウの免疫力・回復力は驚異的

ダチョウ抗体とは、ダチョウを使って作る抗体です。獣医学博士の塚本康浩氏によって、製造方法が確立されました。

もともとダチョウは非常に高い免疫力と回復力を持つ鳥で、骨が見えるほどの怪我をしても、自分で治してしまうのだそうです。その驚くべき身体機能を活用して作られるのが、ダチョウ抗体というわけです。

量産・加工しやすく、さまざまな抗体が作れる

ダチョウ抗体の作り方はまず、無害化したウイルスをメスのダチョウに注射することで、体内に抗体を作らせます。そのダチョウが産卵すると、ヒナを守るための仕組みとして、抗体は卵(卵黄部分)に受け継がれます。この卵黄から抗体を取り出せば、ダチョウをほとんど傷付けることなく、抗体を手に入れることができるのです。(抗体の製造に使用するのは、無精卵です。)

ダチョウの産卵数は年間70~100個、1個当たりの重量は鶏卵の約25~30倍です。そのため、ダチョウ抗体は量産も比較的容易です。安定性が高く、加工しやすいことも特徴です。

また、ダチョウに注射するウイルスや異物の種類を変えることで、さまざまな抗体が作れます。身近なところではインフルエンザウイルスや花粉症、アトピー性皮膚炎に対する抗体などが実用化されています。

ダチョウはおからなどの廃棄物になりやすい食品を餌にできるため、環境負荷も少ないです。

ダチョウ抗体についての論文も出ている

以下は、塚本康浩氏による論文「ダチョウ抗体を用いたインフルエンザ防御用素材の開発」からの引用です。インフルエンザウイルスに対するダチョウ抗体を担持させたフィルターの効果について、論じたものです。

インフルエンザウイルスがダチョウ抗体フィルターに付着するとウイルス表面のhemaggretinin(HA)抗原にダチョウ抗体が結合し,結果としてウイルスの感染力を抑制することを狙ったものである。HA抗原はインフルエンザウイルスが細胞に感染するときに重要な蛋白質であり,フィルターにはこの抗原をターゲットとして作製したダチョウ抗体を使用している。フィルターにインフルエンザウイルス液を滴下し,その洗浄液の感染性をMDCK細胞を用いて検証したところ,抗体を担持させていないフィルターでは,MDCK細胞がウイルス感染し細胞変性効果(CPE:細胞が変性し球形化し浮遊してくる)が認められたが,ダチョウ抗体フィルターを用いることにより,CPEが著しく抑制きれた(図3)。この現象は,季節性インフルエンザウイルス(HlN1,H3N2,B)だけではなく,高病原性烏インフルエンザウイルスH5N1,さらには,新型インフルエンザウイルスHlNlの全てにおいて認められている。つまり,ダチョウ抗体フィルターによりインフルエンザウイルスが不活性化きれることが証明された。
さらに,より実践的な検証を行うために以下の感染実験を行った。フィルターで覆った箱の中に鳥インフルエンザウイルスH5N1に感染させた鶏を入れ,その周りに健常な鶏を飼育した。使用したウイルスはインドネシアでのH5Nl臨床株であり,鶏では100%の致死率を示す強毒性のものである。抗体を担持させていないフィルターを用いた場合,箱の中の感染鶏から箱周囲の鶏にウイルスが感染し,約半数が死亡した。しかし,ダチョウ抗体フィルターを用いた場合は全羽が生存した。これにより,ダチョウ抗体フィルターは鶏から鶏の感染を抑制することが証明された。

引用元:J-STAGE

また、塚本氏がかかわるダチョウ抗体に関する論文には、査読論文も発表されています。英語で書かれたものですが、タイトルを掲載しておきます。ネットで検索すると、PDFファイルで全文読めます。
「Development of neutralization antibodies against highly pathogenic
H5N1 avian influenza virus using ostrich (Struthio camelus) yolk」

ダチョウ抗体を使った化粧品の効果

「有効成分」ではない点に注意が必要

ダチョウ抗体は医療に活用されていますが、化粧品の有効成分としての承認は受けていません。つまり、化粧品成分としての効果は公的には認められていない、ということです。

公的に認められていないことと、効果の有無はイコールではありません。しかし、化粧品は薬ではないので、過度の期待は禁物と思っておくのがよいでしょう。

成分名も化粧品では「ダチョウ卵黄エキス」とされています。メーカーによっては、「ダチョウ卵黄抽出液」と呼ぶこともあるようです。

アトピーの痒み・ニキビなどのトラブルに

化粧品成分としての「ダチョウ卵黄エキス」がもたらす作用には、以下のものが挙げられています。

  • 抗セラミダーゼ
  • 抗黄色ブドウ球菌
  • 抗アクネ桿菌
  • 抗緑膿菌
  • メラニンの生成を抑える
  • 抗スギ・ヒノキ・イネ・ブタクサ花粉
  • 抗ハウスダスト

ざっくりいうと、アトピー性皮膚炎による痒み・肌荒れ・ニキビ・シミ/そばかすの予防・花粉・ハウスダストが気になる人によいようです。

ただし、あくまで「整肌保湿成分」としての配合になるため、効果は緩やかなものと考えた方がよいでしょう。

今後に期待の成分

化粧品成分としての「ダチョウ卵黄エキス」は有効成分ではないため、法律の関係で謳える効果が限定されています。

しかし、もしも今後、医薬部外品の有効成分に認められることがあれば、そのときは「〇〇の効果があります」と明言できるかもしれません。

現段階でも皮膚科などで配合化粧品が処方されていることがあるので、今後に期待したい成分です。

アレルギー体質の人は注意が必要

「ダチョウ卵黄エキス」は鳥の卵を原料とするため、鶏卵アレルギーがある人は使用を避けた方がよいでしょう。既にアレルギー発症の報告も出ているそうです。

アレルギーは場合によって、命にかかわる重篤な症状(アナフィラキシー)を引き起こすこともあります。

また、他の化粧品成分と同様に、アレルギー以外の個人差によっても肌に合わない人がいる可能性もあります。ダチョウ卵黄エキスが配合された化粧品を始めて使うときは、パッチテストで異常が出ないことを確認した上で、様子を見ながら使用するとよいでしょう。

まとめ

ダチョウ抗体は、化粧品成分としては「ダチョウ卵黄エキス」「ダチョウ卵黄抽出液」と呼ばれています。

今のところは有効成分としての承認はされていないため、配合化粧品が謳える効果は限定的です。

しかし、ダチョウ卵黄エキス自体はアトピー性皮膚炎による痒み・肌荒れ・ニキビ・シミ/そばかすの予防・花粉・ハウスダストが気になる人によいとされるため、今後に期待したい成分の一つといえそうです。

ただし、鶏卵アレルギーがある人にはアレルゲンとなることがあるため、注意が必要です。