化粧品の広告で、「鉱物油フリー」「鉱物油無添加」と書かれているのを見かけたことはないでしょうか?「鉱物油は危険」と断言している化粧品メーカーのサイトなどもあるので、不安に感じますよね。
化粧品の鉱物油は、肌に悪いものなのでしょうか?ここではそうした疑問に答えるべく、化粧品成分としての鉱物油の効果とメリット・デメリットを解説します。 化粧品の鉱物油が心配な人は、参考にしてください♪
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そもそも鉱物油とは?
鉱物油とは石油由来のオイルのこと
鉱物油とは、石油由来のオイルのことです。英語では「mineral oil(ミネラルオイル)」といいます。化粧品成分として使われる以外にも、機械の潤滑油や医薬品など、さまざまな分野で使用されています。
ちなみに石油は、炭素を含む「有機物」です。以前は「石油は無機物からできたのでは」という説もありましたが、現在は「大昔のプランクトンが長い時間をかけて変化したもの」という説が優位になっています。
また、鉱物油は「油」なので、大まかには「油性成分」として扱われています。化粧品に使用される油性成分は化学構造によっていくつかの種類に分類されますが、鉱物油は「炭素と水素」でできていることから、「炭化水素」に分類されています。
皮膚科で使われる「ワセリン」も鉱物油
鉱物油の代表的なものの一つに、皮膚科などで使われている「ワセリン」が挙げられます。ベビーオイルの主成分である「ミネラルオイル」も鉱物油です。
世間のイメージとは逆に、化粧品に使われる高純度の鉱物油は肌への安全性が高く、皮膚刺激も少ないことが特徴です。 そのため、アトピーなどのデリケートな肌を保護したり、赤ちゃんの未熟な肌をケアしたりといった用途にとても適しているのです。
化粧品に配合される鉱物油の成分名には、以下のものが挙げられます。
- ミネラルオイル
- ワセリン
- パラフィン
- 流動パラフィン
- セレシン
- マイクロクリスタリンワックス
- 水添ポリイソブテン
- モンタンロウなど
鉱物油が危険といわれる理由
昔の鉱物油は不純物が含まれていた
実際は安全な成分であるにもかかわらず、鉱物油が危険なイメージを持たれるようになった原因は、「昔の鉱物油の精製度の低さ」にあります。
1970年代は精製技術が低かったため、当時の化粧品に配合される鉱物油には不純物がわずかに含まれていました。
その不純物が引き起こす、「油焼け」などの肌トラブルや皮膚刺激が問題になったことで、鉱物油自体が危険であるかのような誤解が広まってしまったのです。
ですが正確には、肌に悪さをしていたのはあくまで不純物であり、鉱物油ではありません。鉱物油自体は、アトピーなどの患部や赤ちゃんにも使えるほど安全なものなのです。
現在は不純物が含まれていないので安全
精製技術の向上によって、現在の化粧品に使われる鉱物油は、高度に精製されたものになっています。
安全性のチェックもしっかりされているので、肌に合わないのでない限りは、基本的には特に悪い成分ではありません。
化粧品に配合される鉱物油のメリット
水分の蒸発を防ぐエモリエント効果が高い
先ほど少し触れましたが、鉱物油は「炭素と水素」でできています。水になじみやすい「酸素」をまったく持っていない=水になじまないので、肌の水分の蒸発を防ぐエモリエント効果に優れています。
鉱物油自体に美肌効果はありませんが、美肌の大敵である乾燥から肌を守りたいときにはとても役立ちます。
経皮吸収されにくいので安全性が高い
また、鉱物油はほとんど経皮吸収されないことも、安全性が高いとされている理由の一つです。
酸化しにくいので肌荒れの原因になりにくい
鉱物油は安定性が高く、酸化しにくいことも特徴です。肌の上で「酸化」という化学反応をしないことは、皮膚刺激の少なさに繋がり、肌荒れの原因になりにくいことにも繋がります。
値段が安く、供給量も安定している
鉱物油のメリットには、「値段の安さ」も挙げられます。原料コストが安いので、安価な製品にも惜しみなく配合できます。 供給量も安定しているので、いつでも買える安心感もあります。
メーカーにとっても私たち消費者にとっても、頼もしい成分であるといえるでしょう。
化粧品に配合される鉱物油のデメリット
美肌に役立つ成分は含まれていない
鉱物油は肌の水分の蒸発を防ぐことで、間接的に肌のうるおいやバリア機能を守ってくれる効果があります。
ですが、植物オイルに含まれる「オレイン酸」や「パルミトレイン酸」のような、「直接的に美肌に有用な成分」は含まれていません。
そのため、鉱物油だけでは肌自体の水分量を向上させることは不可能ですし、肌の乾燥やバリア機能の低下を根本的に解決する成分とはいえません。
よりしっかりとした保湿を考えるのであれば、セラミドやヘパリン類似物質、低分子ヒアルロン酸など、角層に浸透するタイプの保湿成分が配合された化粧水や美容液を塗り、その上から鉱物油でフタをする使い方が効果的です。
ベタつきが気になることがある
「油性」の性質が強く、ベタつきが気になりやすいのも鉱物油のデメリットです。 ワセリンやベビーオイルなどを使ったことがある人の中には、「いかにも油を塗ったという感触で、使用感がイマイチ」と感じた人も少なくないのではないでしょうか。
脂性肌・思春期ニキビを悪化させる可能性
鉱物油は「油」なので、脂性肌とは相性がよくありません。油を塗ることで余計に肌がベタつきますし、毛穴が詰まったりニキビができてしまうこともあるからです。
また、思春期ニキビに悩んでいる人も、肌の油分が多すぎる状態なので、鉱物油などの「油」を塗ることは避けた方がよいでしょう。
クレンジングの鉱物油は肌を乾燥させる
鉱物油は、クレンジングオイルの「メイク落とし成分」としても利用されており、そうした商品は成分表示の上位に「ミネラルオイル」と書かれています。
ミネラルオイルを主成分とするクレンジングオイルは、オイルタイプのクレンジングの中でも特にメイク落とし効果が高いことが特徴です。 ですが、メイク(≒油)を落とす力が強い=「肌への脱脂力も強い」ということなので、肌を乾燥させやすいデメリットがあります。
したがって、毎日使うのはあまりおすすめできません。 肌のことを考えるのであれば、普段は乾燥しにくいミルククレンジングなどを使用して、ミネラルオイルのクレンジングオイルは濃いメイクの日だけにした方がよいでしょう。
メイクアップ製品は落としにくくなる
鉱物油は、ファンデーションなどのメイクアップ製品や日焼け止めにも配合されることがあります。「油性」の性質が強い鉱物油を配合することで、汗や水に強く、崩れにくい製品が作れるからです。
しかし、「崩れにくいメイクアップ=簡単には落とせない」ということでもあります。落とすときは脱脂力の高いメイク落としが必要になるため、落とすプロセスで肌に負担がかかります。
まとめ
昔の鉱物油は不純物が含まれていたので、「油焼け」などのトラブルを引き起こすことがありました。ですが、鉱物油自体は肌への安全性が高く、皮膚刺激も少ない成分です。
肌の水分の蒸発を防ぐエモリエント効果が高いので、肌を保護したいときに適しています。 現在は不純物もしっかり排除されているので、アトピー肌の保護や、赤ちゃんのスキンケアにも多く利用されています。
ただし、メイク落とし成分としては脱脂力が高いこと、ファンデーションなどのメイクアップ製品は落としにくくなる点は注意が必要です。鉱物油の性質を理解した上で、上手に利用しましょう。
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